ツイノベ(Twitter Novel) #1

* ハサミ
 死にたくなったらハサミを使おうと決めてるんだ。
 喉に刃先を向けて一気に倒れ込むのさ。
 痛いのは確実なのに、成功するか不確実なのが最高だね。

 いつ思い立ってもいいように僕の周りはハサミだらけだ。
 あれ、君はもう気付いたのかい。これが何の比喩なのか。


* 幾つだと思う?
「バナナは七本、リンゴは五個。じゃあイチジクは?」
「一個だろ?」
「残念、九個よ。今度はそっちが問題出す?」
「いいよ。じゃあナシは?」
「簡単、ゼロね」

「ううん」僕は首を横に振る。
「え? じゃあ四個とか。あ、七個?」彼女が悩み出す。
 答は二個って言ったら納得するかなあ。 

 

 

 

ツイノベ(Twitter Novel)#2

 * 理想の彼女

 理想の彼女に会って結婚を申し込んだ。
 二年後に双子の娘が生まれて美希と有希と名付けた。

 両手で娘たちと手をつないで歩いた。
 一眠りする間に時は経ち、娘たちは母親より背が高い。
「ね、言った通りでしょ」

 でも彼女の口癖は二十年前と変わらない。



* 石化
「世界は石化してるね」 彼女は嘆息した。
「溶解するよりましさ」 僕は反論した。
「固まるのと溶けるのに違いあるの?」 彼女が首を傾げる。
「もちろんさ、石化は呪文で元に戻せるからね」

 それを聞いて、彼女は笑顔になった。
 こんな風にして僕は、大事なことを訊ね忘れてしまう。